経営戦略,マーケティング,IT活用のトータルコンサルタント アオヌマ経営情報研究所 青沼泰彦



経営用語集【SIS(戦略的情報システム)】


SIS(Strategic Information System:戦略的情報システム)

情報技術の活用により競争戦略を支援・構築するという考え方.
1985年にC.M.ワイズマンが,Strategy and Computers: Information Systems As Competitive Weaponsで提唱した.
(Strategic Information Systems邦訳『戦略的情報システム――競争戦略の武器としての情報技術』ダイヤモンド社(1989年))

IT(情報技術)を単なる業務の合理化・効率化に使うのではなく,経営の意志決定や競争力強化に活用しようというもの.
事例として,アメリカン航空の旅行代理店向け座席予約システム「SABRE」があげられている.

【活用の局面】
・蓄積データによる経営状況のリアルタイム把握と迅速な意思決定
・競争力のある製品や優位性のあるサービスの開発
・業務の抜本的改革
・新規事業開発

日本では1980年代後半から当時の通産省を中心に普及促進を目指したが,ハード・ソフトが高価で操作もやや難しかった(UNIXをベースとしたシステムが多かった).
ヤマト運輸,花王,セブンイレブンなどSISの考え方を取り入れ成果を上げた企業もあるが,広く普及するには至らなかった.

1989年の情報化白書では,
「経営戦略を実現するために,情報・通信技術を用いた組織内または組織間,あるいは両者間の業務結合により有機的・統合的に築かれた,差別化による競争優位の情報システム」
と定義されている.
(https://www.jipdec.or.jp/archives/publications/J0005023.pdf p45)

またSISは,ADP, IDP, MIS, DSSおよびOAといったそれまでのITの概念を吸収し,統合したものととらえることもできる.

表 企業情報システムの変遷
  概念
区分  
自動データ処理(ADP)
統合データ処理(IDP)
経営情報システム(MIS)
意思決定支援システム(DSS)
オフィスオートメーション(OA)
戦略的情報システム(SIS)
目的
・省力化
・コスト削減
・省力化
・コスト削減
・構造的意思決定支援
・非構造的意思決定支援
・省力化
・コスト削減
・個人の情報処理能力向上
・差別化
・既存事業の質的改善
処理方式
・バッチ処理
・非集中
・オンライン
・集中
・オンラインリアルタイム
・集中
・タイムシェアリング
・分散
・スタンドアロン
(後にネットワーク化)
・分散
・オンラインリアルタイム
・ネットワーク
・集中/分散
IS部門の機能
・データ処理サービス
・データ処理サービス
・システム開発
・システム開発
・情報検索支援
・アプリケーション保守
・情報検索支援
・情報処理コンサルティング
・業務改善・改革
・ユーザー教育
情報処理コンサルティング
・システム開発
・戦略立案支援
・コーディネート
主な影響
・一般事務職層
・一般事務職層
・監督者層
・監督者層
・管理者層
・上級管理者層
・専門職層
・オフィスワーカー全体
・全階層
主な技術
・汎用コンピュータ
・機械語・アッセンブラ語
・高級言語
・ディジタルデータ転送
・データベース
/データコミュニケーション
・光ファイバ
・磁気ディスク
・第四世代言語
・リレーショナルデータベース
・プロトタイピング技法
・マイクロコンピュータ
・簡易言語(表計算等)
・LAN
・MML
・データ辞書
/データ登録簿システム
エキスパートシステム
ISDN(デジタル統合網)
<資料>1989年 情報化白書(引用元:島田達巳,海老沢栄一編「戦略的情報システム―構築と展開[1989]日化技研)から一部抜粋

SISという用語は過去のものであるが,ICTを戦略的に活用しようという理念は,現代のDX(デジタルトランスフォーメーション)の源流になったともいえる.


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