新潮社 (編)「人生の鍛錬―小林秀雄の言葉」 (新潮新書 2007/04)
本書は「小林秀雄全作品」から、発表年月の順に言葉を選んで纏めたものです。
小林秀雄(1902-1983)と聞くと、受験生時代を思い出す人も多いのではないでしょうか。
日本の近代批評の創始者と評される小林秀雄ですが、難解な文章が多いという印象があります。それゆえ受験問題の定番となっていたのでしょう。
年代にしたがって読み進むと、小林秀雄の興味・関心の在り処が、文芸評論から書画骨董へ、そして人生全般へと変化していることがわかります。
また、若いころの研ぎ澄まされた文章が、次第に深みと円熟を増しているように感じられます。
たとえば次の文章は、主題の選び方や対比する概念による表現が、ゲーテの格言を彷彿とさせます。
「人間は何と人間らしからぬ沢山の望みを抱き、とどのつまりは何んとただの人間で止まる事でしょうか」(「私の人生観」)
「喜びを新たにするには悲しみが要り、信を新たにするには疑いが要る」(「好色文学」)
いずれも著者40代後半のときの文章です。
小林秀雄の文章が難解といわれるのは、批評に対する厳格で真摯な態度からきているものと思われます。
批評するという行為は、簡単なことではないのです。
