小野 善康 (著) 「不況のメカニズム―ケインズ『一般理論』から新たな『不況動学』へ」 (中公新書 2007/04刊)
小売業や飲食・サービス業の現場で、モノが売れない、顧客が減ったという声を、昨秋以来頻繁に聞かされるようになりました。
商業統計(*1)や家計調査(*2)などの統計資料にも、消費の低迷は顕著に現れており、平成不況とよばれる需要低迷が10年以上も続いています。米国で主流の市場メカニズムを基本とする新古典派経済学による処方では、問題の解決には至っていないようです。
市場が効率的に働いても、需要が増えないのはなぜか、本書はその構造的な問題に迫ったものです。
著者は、ケインズ一般理論について、その誤謬を正し、足りない要素を付加することで、ケインズ理論を再構築し、現代においても有効であることを証明しようとしています。
著者自身この試みを、一般理論というジグソーパズルの足りないピースを補ってパズルを完成させるものといっています。
ケインズは、どのような公共事業であっても雪だるま式に需要を喚起するという乗数効果を唱えましたが、これが新古典派の「小さな政府論」から批判されることとなり、その結果公共事業の真の価値まで否定されてしまったということです。
著者はこのようなケインズの誤りを修正し、消費の利子率という概念を導入してケインズ理論を再構築することにより、公共事業の意義を再確認します。
「公共事業の意義とは根拠のない需要の波及効果ではなく、うち捨てられていた貴重な労働資源を少しでも役に立つ物の生産に向けることである。その価値は、それによってできた物の価値のみによって判断されなければならない」(p166より)
ジグソーパズルに残された最後のピースとは、消費の利子率でした。
(*1)http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/syougyo/index.html
(*2)http://www.stat.go.jp/data/kakei/index.htm
